このコードは、USDJPYのFXトレード戦略をバックテストするもので、H1(1時間足)とM5(5分足)のピボットポイントを利用して上昇トレンドでのブレイクアウトエントリーを検出し、リスクリワード比(RRR)に基づくトレード結果を評価しています。コードは機能的に一貫していますが、いくつかの欠点や改善の余地があります。以下に、技術的およびトレード戦略の観点から主な欠点を挙げます。
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### 1. **データ処理とエラー処理の不足**
– **問題**: データ取得時のエラー処理が不十分。
– `yf.download`でデータ取得に失敗した場合(例: ネットワークエラーやAPI制限)の例外処理がありません。これにより、データが欠損または不完全な場合にコードがクラッシュする可能性があります。
– 解決策: `try-except`ブロックで`yf.download`をラップし、エラー時に適切なメッセージを表示するか代替データソースを検討する。
– **問題**: ピボット計算における欠損データの処理が不完全。
– `pivots_causal`関数では、`rolling`計算時に`min_periods=win`を指定していますが、データが不十分な場合(例: インデックスが不連続)のエッジケースを考慮していません。
– 解決策: インデックスの連続性を確認し、欠損データや異常値(極端な価格スパイクなど)をフィルタリングする前処理を追加。
– **問題**: タイムゾーンの正規化が不完全。
– `_normalize_tz`関数はタイムゾーンを削除しますが、異なるデータソース間でタイムゾーンが一致しない場合や、夏時間(DST)の影響を考慮していません。FX市場では正確な時間整合性が重要です。
– 解決策: すべてのデータをUTCに統一し、タイムゾーン関連のエラーをログに記録する。
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### 2. **トレードロジックの限界**
– **問題**: H1上昇トレンドの判定が単純すぎる。
– `dow_uptrend_flags`関数は、L-H-L-HのシーケンスでHL↑かつHH↑を確認しますが、これが実際の市場環境で十分なトレンド強度を保証するとは限りません。たとえば、レンジ相場やトレンドの初期/終焉での誤検知が起こり得ます。
– 解決策: トレンド強度を補強するために、移動平均(例: SMA/EMA)やADXなどの追加指標を組み合わせる。また、トレンドの持続性を評価する条件(例: 一定期間の価格変化率)を追加。
– **問題**: エントリーロジックが単一のピボットブレイクに依存。
– M5での戻り高値ブレイクは単純な戦略ですが、ノイズによる偽陽性(false breakout)が頻発する可能性があります。特に、FX市場の5分足はボラティリティが高く、ブレイクアウトが失敗しやすい。
– 解決策: ブレイクアウトの確認にボリュームや他のテクニカル指標(RSI、MACDなど)を追加。また、ブレイク後のリテスト(再試行)を条件に含める。
– **問題**: リスクリワード比(RRR)の固定値(1.5)が市場状況に適応しない。
– RRR=1.5はすべての市場環境で最適とは限りません。ボラティリティが高い/低い場合に、リスクとリターンのバランスが崩れる可能性があります。
– 解決策: ATR(Average True Range)や直近のピボット間隔に基づいて動的にRRRを調整する。
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### 3. **バックテストの現実性**
– **問題**: スプレッドとスリッページのモデルが簡略化されすぎ。
– `SPREAD_PIPS`(0.2pips)と`SLIP_PIPS`(0.1pips)は固定値であり、実際のFX市場では時間帯(例: アジア時間 vs ロンドン時間)や市場の流動性によって大きく変動します。
– 解決策: スプレッドを時間帯ごとの平均値や動的モデル(例: 直近のスプレッドデータ)に基づいて設定。スリッページもボラティリティに応じて調整。
– **問題**: バックテストが過去データに過剰適合するリスク。
– パラメータ(`K_H1=2`, `K_M5=2`, `RRR=1.5`)は特定のデータセット(USDJPY, 730日+60日)で調整された可能性があり、他の通貨ペアや期間での汎化性が低い。
– 解決策: 複数の通貨ペアや異なる期間でクロスバリデーションを行い、戦略のロバスト性を検証。また、ウォークフォワード分析を導入して将来のパフォーマンスを推定。
– **問題**: 同時ヒットの優先ルールが保守的すぎる。
– `bar_exit_long`関数では、SLとTPが同一バーでヒットした場合にSLを優先しますが、これが必ずしも現実的でない場合があります(例: 高ボラティリティ時にTPが先にヒットする可能性)。
– 解決策: バー内の価格動態を考慮し、たとえば高値/安値の到達順序をシミュレーションする。また、実際のティックデータを用いた高精度バックテストを検討。
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### 4. **パフォーマンス評価の不足**
– **問題**: 評価指標が限定的。
– 現在はトレード数、勝率、総ピップ数、プロフィットファクター、最大ドローダウン(pips)のみを計算していますが、他の重要な指標(例: シャープレシオ、ソーティノレシオ、平均保有時間)が欠けています。
– 解決策: リスク調整後リターン(シャープレシオなど)やトレードごとの保有期間、勝敗別の平均ピップ数を追加。また、トレード結果の分布(ヒストグラム)を可視化。
– **問題**: エクイティカーブの分析が不十分。
– 最大ドローダウン(`max_dd`)は計算されていますが、ドローダウンの期間や頻度、回復時間などの詳細が欠けています。これらは戦略の安定性を評価する上で重要です。
– 解決策: ドローダウンの期間(duration)やエクイティカーブの平滑性を評価する指標を追加。グラフによる可視化も有効。
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### 5. **コードの構造と保守性**
– **問題**: コードのモジュール性が低い。
– ロジックが単一のスクリプトに詰め込まれており、関数間の依存関係が強い。たとえば、`pivots_causal`や`dow_uptrend_flags`は特定のデータ形式(OHLC)に依存しており、再利用性が低い。
– 解決策: クラスベースのアーキテクチャを採用し、データ取得、ピボット計算、エントリーロジック、バックテストをモジュール化。また、設定(`SYMBOL`, `RRR`, `K_H1`など)を外部設定ファイル(例: JSON)に分離。
– **問題**: コメントとドキュメントが不足。
– 一部関数(例: `pivots_causal`)には説明がありますが、全体的にコメントが少なく、初心者や他者がコードを理解するのに時間がかかる可能性があります。
– 解決策: 各関数や主要ロジックに詳細なコメントを追加。Docstringを充実させ、入力/出力の型や目的を明記。
– **問題**: ログやデバッグ機能がない。
– エントリー/エグジットの詳細や中間結果(例: ピボットポイント、トレンドフラグ)が記録されないため、デバッグやトレードの追跡が困難。
– 解決策: ログライブラリ(例: `logging`)を使用し、エントリー条件やピボット検出の詳細を記録。トレードごとの詳細(トリガー時間、価格など)をCSVに出力。
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### 6. **市場環境への適応性**
– **問題**: 市場のボラティリティや流動性を考慮していない。
– USDJPYの特性(例: アジア時間の低ボラティリティ、ロンドン時間の急騰)に依存する戦略ですが、時間帯や経済指標発表時の影響を無視しています。
– 解決策: 時間帯フィルタ(例: ロンドン/ニューヨーク時間のみエントリー)や経済指標カレンダーを参照して高ボラティリティ期間を回避。
– **問題**: 通貨ペア依存。
– コードはUSDJPY専用に書かれており、他の通貨ペア(例: EURUSD, GBPJPY)での動作が未検証。ピップサイズ(`PIP_SIZE=0.01`)やスプレッド(`SPREAD_PIPS=0.2`)はUSDJPY固有です。
– 解決策: 通貨ペアごとのピップサイズやスプレッドを動的に設定する辞書を導入。例: `PIP_SIZE = {“USDJPY”: 0.01, “EURUSD”: 0.0001}`。
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### 7. **計算効率**
– **問題**: ピボット計算の効率が低い。
– `pivots_causal`の`rolling`計算は、大きなデータセット(特にM5)で計算コストが高い。大量のデータやリアルタイム処理ではパフォーマンスが低下する可能性。
– 解決策: `numba`や`ta-lib`を使用してピボット計算を最適化。また、必要なデータ範囲のみを処理するよう制限。
– **問題**: ループ処理が多い。
– `dow_uptrend_flags`やエントリーループは逐次処理が多く、大きなデータセットで遅延が発生する。
– 解決策: Pandasのベクトル化演算を活用し、ループを最小限に抑える。たとえば、トレンド判定を`shift`や`rolling`でベクトル化。
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### まとめ
このコードは基本的なトレード戦略のバックテストを実装していますが、以下のような改善が必要です:
1. **エラー処理とデータ整合性**:データ取得や処理のロバスト性を向上。
2. **トレードロジックの強化**:偽陽性を減らし、市場環境への適応性を高める。
3. **バックテストの現実性**:スプレッドやスリッページの動的モデルを導入。
4. **パフォーマンス評価**:より包括的な指標と可視化を追加。
5. **コード構造**:モジュール化とドキュメントを改善。
6. **市場適応性**:時間帯や通貨ペアの違いに対応。
7. **計算効率**:ベクトル化や最適化ライブラリを活用。
これらの改善により、戦略の信頼性、汎用性、保守性が向上し、より実際のトレード環境に適したコードになります。必要に応じて、どの点を深掘りして修正例を提供するかお知らせください!
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